犬山の層状チャートを見るために、下呂温泉で一泊し、翌日、飛騨川沿いの国道41号線を下って各務原に向かった。途中、白川町から七宗町(ひちそうちょう)にかけて飛水峡と呼ばれる峡谷がある。飛水峡はチャートと砂岩からなる岩盤を飛騨川が深く浸食した渓谷で、そこに大小さまざまな甌穴(ポットホール)群が形成されている。当日は下調べ不足で甌穴の見学コースが判らなかったが、旧国道沿いを歩けば観察できたようだ。
▼飛水峡
▼犬山チャート
岐阜県各務ヶ原市を流れる木曽川沿いには層状チャートの代表的な露頭がある。チャートは放散虫などのプランクトンが集積した岩石で、もともと古太平洋の遠洋深海底に堆積した地層が、海洋プレートの運動によって大陸縁へ移動し、ジュラ紀中世に陸側へ付加されたものと考えられている。
チャートには様々な色があり、緑色~黒色は堆積したときは海洋中の酸素が少なく、赤褐色のチャーが堆積したときは酸素が多くあったと考えられている。チャートの積層状態から、三畳紀のチャート堆積時の海洋の無酸素~貧酸素環境の変化を読み取ることができる。
▼地層は灰色や暗灰色のチャートから赤褐色のチャートの順に積み重なっていて、三畳紀中期のはじめ頃に酸素が多い状態へ回復したことがわかる。
▼周辺の露頭ではしばしば褶曲等が観察される。
チャート層の全体の厚みは百数十メートル、チャートの堆積速度は1000年で2㎜弱なので、約6000万年かけて溜まったものと推定できる。厚さ数 cm のチャート・珪質泥岩の 1 セットは、平均約 2.3 万年かけて堆積したと推定され、これはミランコビッチサイクルに対応しているとも考えられている。(文献)
▼川を北側に登って船着き場付近に行くとチャートの堆積が終わり、チャートに泥が混じった珪質泥岩→泥岩へと変わる。半遠洋域から海溝に近づき、泥岩の互層になっていることがわかる
▼ジオランドぎふのHPより 地質図
凡例:
黄Mss・・・海成層・砂岩
紺Mmd・・・海成層・泥岩
茶Mch・・・チャート
青Msi・・・珪質泥岩
犬山のチャートでは、中生代2.5億年前から6500万年の地球の歴史(海洋プレートの移動と付加体のでき方)を感じることができる。さらに詳細を理解をするには専門の学芸員の方の解説が必要だと感じた。
大鹿村中央構造線博物館のサイトの説明図:
参考文献:
・野外研修「歴史災害と地球環境の変動を見る-根尾谷断層と犬山チャート」
・岐阜・各務原地域の美濃帯堆積岩類と各務原台地の第四紀層
・犬山チャートP/T境界部周辺 露頭レプリカ再生標本
・チャートのグラデーション(鵜沼のチャート)【美濃地方の露頭5】
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