はじめに
2016年に徳島から高知までの遍路旅をしたが、その時は歩き・自転車・車の旅だった。その後、高知から八十八番の大窪寺まで歩いてみると、とくに車で移動した区間だけは歩き遍路に「変えたい」気持ちがが強くなった。そこで、今年は徳島、高知の遍路道を何回かに分けて歩くことにした。本当は一回で済ませたいが勤めの関係上、区切り打ちをせざるを得ない。旅費がかさんでしまうが「旅のためにバイトをしている」と発想転換し、体が動くうちに実行に移すことに決めた。
<2016年の歩き遍路(遍路ころがし)の足取り>
2月15日(水)曇 府中駅~恩山寺~立江寺
歩行距離:23㎞ 歩行時間:5時間20分
朝、中央線瑞浪駅の駐車場まで車で行き、そこから新幹線・高速バスを乗り継ぎ、前回の歩き遍路の終点、17番札所の最寄り駅、府中駅(こうえき)に向かった。今週は大陸から強い寒気が流れ込み、徳島も最高気温が4℃で北風も吹いて寒い。ダウンとダウンベストを重ね着し、11時に歩き遍路を開始した。
恩山寺までは賑やかな徳島市内を歩く平坦なルート。阿波踊り会館の横を通り、途中ファミレスで昼食をとって、18番札所恩山寺には15時に到着した。
<第18番札所恩山寺 おんざんじ>
恩山寺から立江寺までは旧遍路道を歩く。国道から離れようやく静かに歩くことができる。19番札所立江寺の仁王門前に着くと、道路を歩いてきた女性が「どちらからですか?」と話しかけてきた。「長野県から。」と答えると「私は安曇野に友人がいる。諏訪にも行ったことがあるが長野は寒いでしょう。」などと話をし、「これお接待。」と言ってチョコレートの包みをくれた。「一日遅れのバレンタインデーですね。」とお礼を述べ、ありがたくいただいた。
<第19番札所立江寺 たつえじ>
恩山寺も立江寺も今回で2度目だが、1回目は車で回ったせいか境内の様子をすっかり忘れていた。歩き遍路の場合、お寺に至るまでに寺の周辺も眺めている分、脳裏に刻まれる情報が違うのかもしれないと思った。立江寺をお参りした後、電車で立江駅から阿南のビジネスホテルに移動した。
2月16日(木)曇のち晴れ 立江駅~鶴林寺~太龍寺~新野
歩行距離:30㎞ 歩行時間:8時間50分
最高点の標高: 559 m
最低点の標高: 3 m
総所要時間: 08:50:21
今日は険しい山道で古くから遍路道の難所と言われ、国史跡となっている「阿波遍路道」を歩く。鶴林寺も太龍寺も標高500mの山頂に位置するので、ちょうど飯田の笠松山を2往復し、さらに高低差200mの大根峠を越さなければならい。2016年は鶴林寺と太龍寺に通じる山道を麓から往復しているが、太龍寺から平等寺に通じる「いわや道」は初めてである。
立江駅を7時50分に出発。鶴林寺の麓にある「道の駅ひなの里」まで10km歩き、10時より阿波遍路道にとりつくと、7年前に歩いた山道の記憶がよみがえってくる。
途中、鶴林寺の次の札所、太龍寺の山並みが見える。
<第20番札所鶴林寺 かくりんじ>
山道を汗すること1時間、20番札所鶴林寺に11:20に到着した。前回は雨で深い霧に覆われていたので参詣時間も短かかったが、今回はお寺をじっくり鑑賞できた。
続いて、鶴林寺から太龍寺に通じる急な山道を下る。途中、70代くらいと思われる3人のご婦人のお遍路さんに追いついた。「今日はどちらまでですか?」と問うと、「平等寺までは行きたいと思う」とのこと。彼らはこのペースで行けるのだろうかと心配になりつつ、「お気をつけて」と挨拶をし先を進んだ。
山道を下ると那賀川に着く。この川にかかる水井橋を渡り太龍寺に向かって山道を登っていく。
▼水井橋より鶴林寺方面を振り返る
▼那賀川
太龍寺道は伊那谷の山登りからすればそんなにしんどい山道ではないのだが、鶴林寺までの登りで体力が落ちてるいるのか、後半は息が上がった。21番札所太龍寺に着くとようやく晴れ間がのぞき、先ほど参詣した鶴林寺の山並みが見えた。
▼遍路道には丁石が置かれている。
<第21番札所太龍寺 たいりゅうじ>
▼太龍寺より鶴林寺の山並みを望む
太龍寺を参詣し、ロープウェイ乗り場でキノコ茶をごちそうになった後、空海が修行したという『舎心ケ嶽』を経て「いわや道」を進む。
いわや道は、2013年に『国指定史跡 徳島遍路道』として復活。標高450mレベルの等高線沿いに3㎞程東に進み、標高140mの阿瀬比町に下っていく。北斜面のこのルートは午後になる暗くなり少々心細い。参道を下ること1時間、阿瀬比町の遍路小屋に到着した。ここで、今日宿泊予定の民宿「パンダや」に電話して17時までには着くことを告げ、最後の大根峠の急坂を登った。
平等寺の近くには「山茶花」という評判の良い民宿があるが、できるだけ歩行距離を短くするため、手前に位置する素泊まりの「パンダや」に決めた。ネット情報では主人が人が良くたいへん親切との評判。宿に着くと、今は旅行キャンペーンの「徳島割り」が使えるから、夕食はそのクーポン2000円で食材を買えばよいと、近くのコンビニまで車で連れて行ってくれた。彼のホスピタリティーには感謝するものの家の中が乱雑なのには少々閉口した。それでも毎日外国人や学生の宿泊者がいるようで、山小屋に泊まることを思えばよい民宿なのだろう。パンダやのご主人は、明日の私の行動計画を聞きながらいろいろアドバイスをしてくれた。その中で、「鯖大師」の手前に旧遍路道があり、昔の旅人のように急な峠を越えたり海岸の遍路道を歩くことができるから、ぜひ経験すると良いと勧めてくれた。
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