是枝裕和監督の映画「怪物」が、第76回カンヌ国際映画祭の「脚本賞」とLGBTQ(性的少数者)を受賞した。この映画は諏訪地方がメインロケ地だったので、久しぶりに映画鑑賞した。
監督:是枝裕和、脚本:坂元裕二
出演者:安藤サクラ(麦野早織)、永山瑛太(保利道敏)、黒川想矢(麦野湊)、柊木陽太(星川依里)、高畑充希(鈴村広奈)、角田晃広(正田文昭)、中村獅童(星川清高)、田中裕子(伏見真木子)
諏訪湖を望む町に住むシングルマザーの麦野早織と、その一人息子で小学校5年生の湊。彼らの近くの雑居ビルで火災があったある日から、湊の行動に異変が起きはじめる。湊の行動の原因は何か?
映画は、彼らにまつわる一連の事件を、早織、湊の担任教師の保利、そして湊の3人の視点で回想する。
①早織の視点:息子、湊の証言から、原因は担任の保利のいじめだと考える早織。
②保利の視点:一方、担任の保利は湊が同級生の星川をいじめている様子を目撃したことから、問題は湊にあると考えている。
③湊の視点:同性愛的性向ゆえクラスでいじめにあっている同級生の星川と、実は仲良くしたいという本心を隠している湊。
この映画は、3人の回想シーンを通じて、彼らを取り巻く大人・こどもの社会に潜む「怪物」=自分の正義感=固定観念=偏見が、人を傷つけ追い詰めていくことを観客に暗に示そうとしていると思われる。それゆえ、登場人物が発する言葉のひとつひとつに重要な意味があるように思うが、一回だけの鑑賞では理解できないところも多かった。ただ、これまでの是枝作品と比べ、映画のテーマの意味を深く考えさせられる作品だった。映画のラストで本作が遺作となった坂本龍一の音楽が流れるが、湊と星川のラストを象徴するかのような美しいメロディーにたいへん感動した。
参考
諏訪のロケ地:
・諏訪市の旧城北小学校。ここが是枝監督が諏訪を舞台にして映画を作る「決め手」となったとのこと。
・JR上諏訪駅周辺、立石公園、釜口水門、富士見町の旧JR鉄橋、トンネル等
是枝監督は1980年代、番組制作会社のディレクターだった20代の頃、3年間、伊那市の小学校のクラスに密着して、教科書を使わない学習に取り組み、牛?(山羊だと思うが・・・)を飼って命の尊さを学んでいくドキュメンタリー番組を制作したとのこと。おそらくNHKの作品だったと思うが、この作品は良い番組だったことを覚えている。
(参考記事:カンヌで高評価 映画「怪物」ロケ地・諏訪も期待 是枝監督と信州は“深い縁”「特別な場所」)
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