第67回ブルーリボン賞作品賞、第48回日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝いた話題の映画「侍タイムスリッパー」がアマゾンプライムに追加されていたので鑑賞した。ちょうど1か月前、NHKのアナザーストーリーズ 運命の分岐点で、この映画の誕生秘話が放映されていたので興味を持って観た。
あらすじ(映画.comより)
『現代の時代劇撮影所にタイムスリップした幕末の侍が時代劇の斬られ役として奮闘する姿を描いた時代劇コメディ。幕末の京都。会津藩士の高坂新左衛門は家老から長州藩士を討つよう密命を受けるが、標的の男と刃を交えた瞬間、落雷によって気を失ってしまう。目を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所だった。新左衛門は行く先々で騒動を起こしながら、江戸幕府が140年前に滅んだことを知り、がく然とする。一度は死を覚悟する新左衛門だったが、心優しい人たちに助けられ、生きる気力を取り戻していく。やがて彼は磨き上げた剣の腕だけを頼りに撮影所の門を叩き、斬られ役として生きていくことを決意する。』
安田淳一が監督・脚本を手がけ、東映京都撮影所の特別協力によって超低予算で自主制作作品として完成したこの映画は、時代劇の職人たちの熱い思いがあり、大部屋俳優の伝説の斬られ役、東映剣会の福本清三へのオマージュが込められている。出演俳優は正直そうレベルは高くはないように感じたが、ストーリの奇抜性や監督のこだわりを感じるシーン・カットが随所に見られ最後まで楽しめた。音楽や効果音もシンプルで、最後のエンドロールの音楽はなんとなく伊丹作品に似ていて好感がもてた。ところがエンディングを見直してみても音楽担当(作曲)の名前が載っていない。そこでネット検索をしてみると、なんと著作権フリーの音楽素材を使ったらしい。超低予算なので音楽にお金をかけられないのだろうが、こうしたオプションでも作品が作れる時代になったんだと、時代の変化も痛感した。
面白い映画だったがどうしても気になった点が一つあった。映画は、撮影所のオープンセットに、会津藩士・村田が、高坂新左衛門と同様にタイムスリップしてきたところで終了する。その村田の手に持っている刀は真剣であるはずなのに竹光のように小刻みに揺れていた。映画ストーリー中で、切られ役となった高坂新左衛門が、竹光を真剣の重さとして見せるように工夫をするシーンがあったが、そのシーンと矛盾するラストのカットはなんとも惜しかった。。。
今春はNHKの朝ドラ「カムカムエブリデイ」が再放送されたが、このドラマの条映撮影所の大部屋俳優「伴虚無蔵」も福本清三がモデルだ。この1か月で、アナザーストーリーズ、カムカムエブリデイ、侍タイムスリッパーを立て続けに観たので、時代劇つくり職人の誇りを感じとるとともに、この職人の意気が真田広之主演の『SHOGUN 将軍』のような時代劇の新境地に繋がっていって欲しいと思った。
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